3.1.25 シンデレラ・ストーリーに立ち会うことについて

 

 

 昔、といってもたかだか4.5年前だけど、BSスペシャルでテイラー・スウィフトのライブを観たことがある。確か3枚目のアルバム『Speak Now』が出た頃で、僕自身もよく聴いていた。『Mine』,『Mean』,『Ours』……それぞれの曲の完成度はもちろん、アルバムとして聴き通すことで万華鏡のようにきらきらとしたストーリーを見せてくれる良いアルバムだった。時間的余裕のある大学生の頃で、よくそのアルバムを聴きながら試験勉強や二次創作のBGMなんかにしていた。そんなときだったから、そのライブは録画までして何度もリピートしていたのを覚えている。

 テイラー・スウィフトが一曲歌い終えて、観衆の歓声に応えるときの瞳が焼き付いている。学生の頃いじめられてどん底に落ち、それでも這い上がる気持ちを忘れなかった少女がいま大きなステージに立って、自分にだけ向けられた歓声を全身で受け止めている。鳴り止まない歓声。一人一人が彼女の名前を叫ぶ。スポットライトは消えず、観客席の照明はまるで光の海みたいに煌めいていた。テイラー・スウィフトは信じられないと言ったような表情で立ち尽くし、ただその奇跡を見つめている。


 どうしてこんなことを思い出したかというと、ラジオでLISAの曲が流れたからだった。鬼滅の刃の大ヒットの影響で、彼女の人気もうなぎ登りとなった。数々のテレビ出演、ラジオのゲスト、そして紅白出場。もちろんアニソン界では知らない人はいないくらいの歌手だったし、元々の実力があってこそのこの現状だ。だけど、アニソンという境界を越えてここまでの人気者になるとなると、やはり実力以上の何かが必要になってくるのだろう。作品の善し悪し、時期的な要因もあるだろうし、運という要素だって理不尽なくらいある。いまここにある現実は、そうした様々な因果関係が絡み合って生まれるものだ。


 LISAが声優をやっていた頃から知っている身とすると、まるでシンデレラ・ストーリーみたいだな、と思う。僕はLISAの大ファンというわけではなかったけど、きっとLISA推しの人たちは狂喜乱舞なんだろうな、あるいは切なさや寂しさを感じているのだろうか、何か違うという感じになって離れるのだろうか。推し専の心は計り知れない。世の中で一番でかい感情を持っている人たちだ。そういう意味では、普通のミュージシャンとは少し血色の違った歓声になりそうだけど。

紅蓮華

紅蓮華

  • LiSA
  • アニメ
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