2.12.27 ずっとchamjam

 

 

 

 『推しが武道館にいったら死ぬ』の七巻が発売されたと言うことで久しぶりに読み直してみた。もう一年になるのか……。一年前の冬アニメ覇権といえばまさしく推武道だった。推しが誰かを語り合い、カラオケに行って歌を歌って、なんならちょっと地下アイドルがどんなものか覗き見をした……まぁ、そんな友達は一人もいなかったが。


 平成が生み出した地下アイドルという文化は秋葉を筆頭に語られるが、アイドルを目指す人間がライブを披露する箱という意味では地方にもそれなりの数があるのだろう。chamjamは岡山。岡山、うん。何も知らない。


 しかし、ご当地感を等身大に表出している作品でもあり、聖地巡礼欲がふつふつと湧き上がってくる。巻数を進むごとに隣県との繋がりも見え、作中の枠が広がっていく。津々浦々のアイドル志望が今日もどこかで夢を思い描きながら生活の苦しみに耐え抜いているのだ。未来への不安、恐怖、行き詰まった心。そういったものがさりげなく織り込まれ、ただのギャグテイストの漫画だと思って読んでいるとドキリとさせられる。


 そういう意味では、この作品で一番気になってしまうのはやはりセンターのれおだ。私としてはアニメの改変で許せないシーンがある(失望、落胆、裏切り。こういうのはいくらでも大げさに言いたい)。最終回、岡山アイドルフェスティバルでれおがめいぷる♡どーるのライブを見上げてあーやと優佳に語りかけるシーン。ちがうだろ~! いつもアイドルでいることを心がけているれおが劣等感とか、焦燥とか、羨望とか、悔しさとか、色々なものが混じった心情を吐露してしまう、それが激エモフェスティバルだろうがぁ~!!! こともあろうが「前に進んでる!」ルンルンみたいな無難な仕上げにぶちかえてしまっているんですよ制作陣!!! まぁ、一期の最後だし全体的に明るい感じにまとめたかったんだろうけど、あのれおの口走った台詞をカットしたらこの作品の根幹を土足で踏みならしたのとおんなじなんですよ。そう思いません?(思え)


 まぁ、そんな怒りめいたものをキーボードに叩きつけても、この作品に会えたのはアニメがあるからなんですよね。ごめん、やっぱお前らのこと愛してる……。


 何はともあれ、この作品は流し読みでもしているとうっかり本質を見失ってしまいそうな奥深さがある。百合が美味しいのもポイント。彼女らの本気度には微妙にだけれど温度差があって、生活の苦しみを引き受けて活動しているのも一筋縄ではいかないところだ。アイドルの側も、ファンの側も、そうした生活の一部としてアイドルという偶像があり、各々目指す場所に手を伸ばそうとしている尊さがある。


 今日久しぶりにchamjamの歌を聴いたら意外と(とでもいえば良いのか)聞き込んでしまった。無機質な壁に囲まれる閉塞的な空間にスポットライトが迸っている。それぞれのイメージカラーを持ったアイドルがステップを踏み、汗を流す。オタクの歓声と、幸せを分かち合おうとするようにキンブリを振る姿。曲が終わった後に起こる規模の小さな一体感。そうした情景が、なんだかやけに楽しいものとして頭に浮かんできて。

 

 ※これはマジで恥ずかしい話なんですけど、この放映がやっているシーズンの三月、「お風呂屋さん」に行った。初めての潜入だ。きっかけはそこで働いている女性が推し武道を見ているというのを店のプロフィール欄で発見したからだった。うーん、このオタク……。出たか出てないのかよくわからない精子が出て終わった。